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「俺は何もしてませんよ。元からはなぽさんのスキルにはあれだけの力があったんです。隊長すら止めれるほど強い力が。」

この契約書は、リアルタイムに更新されていくものなのかもしれない。そして、契約者が強くなれば、同じように強くなる。

「はなぽさんの力をお借りできて良かったです。本当はもっとちゃんとした形でお話しできればよかったんですが、これからも"クラフト"を使わせて下さい。」

俺は軽く頭を下げる。

「ドイル殿には大きな借りができてしまいましたからな。こんなスキルでよければ自由に使ってくだされ。良ければ、"クラフト"の使い方をもう少し詳しく教えましょう。」

願ってもないことだ。

「よろしくお願いします。」

俺ははなぽさんと握手を交わした。
その時、はなぽさん宛に"メッセージ"が届く。タダトモさんだ。

「はなぽさん、ドイルさん、隊長が目を覚ましました。」

俺たちは、小屋の中に入っていった。

たしかに、はなぽさんのレベルは35だったし、経験値の欄は空白になっていたはずだ。
それが解放された。

「今、"クラフト"を発動したんですけど、はなぽさん、強くなってます。」

俺は正直に話した。

「なんですと。」

はなぽさんはさらに驚いている。

「それに増設という新しい力が加わっているみたいです。」

見たものをそのまま伝える。

「増設ですと?まさか、まだ先があったとは。」

はなぽさんは、独り言のように呟いた。
これはまさか。
俺は確かめてみることにした。

「はなぽさん、もしかして、今の自分にはこれが限界だと思っていた、とか?」

これはあくまでも可能性だ。はなぽさんは、少し恥ずかしそうに答える。

「お恥づかしながら、建造師として少しばかり伸び悩むというか、どうにも先が見えずにいたのです。」

そうだったのか。

「しかしですな、ドイルさんが使った"クラフト"の規模、威力を見て、こんなこともできたのかと思えたのです。」

はなぽさんが、自分の限界を決めなくなったことで、契約書のステータスも更新されたってことなのか?

「俺の力は間違いなくはなぽさんと同じものですよ。俺にできることは、はなぽさんにもできるはずです。」

契約書のステータスは、はなぽさんのステータスを見た時と同じだったはずだしな。

「"クラフト"にあれほどの力があるとは思いませんでした。いや、むしろ、私が限界を決めていたのかもしれませんな。」

はなぽさんがその言葉を発した瞬間、ドイルのタブレットが光出した。

「あれ?どうしたんだ?」

画面が表示される。

…………

"わんわんPの契約書"が更新されました。
経験値を解放します。

……………

契約書が更新?どういうことだ?
俺ははなぽさんの契約書を発動する。

ドイル
種族:人間
固有スキル:トランスモーフ、クラフト
レベル:36
経験値:417293
体力:1050
魔力:820
攻撃:660
防御:900
敏捷:353
状態:素材鑑定LV5、仕上げLV5、発掘LV6、錬金LV5、増設LV1

ステータスが上がっている。しかも、増設という新しい力が追加されている。

「いやはや、ドイルさんのスキルには驚かされましたな。まさか"クラフト"を使えるようになるとは。」

"トランスモーフ"のことは、警戒されることを考慮して、はなぽさんにもタダトモさんにも話していなかった。今回の件がなければ、言うこともなかったと思う。

「スキルのこと、黙っていてすいませんでした。」

警戒していたとは言え、やはり話さなかったことは謝罪すべきだろう。

「あのようなスキルならば警戒するのも当然というもの。人のスキルを使えるなど、聞いたことがありませんからな。」

やはりそうか。TOMOKI++さんが最初に言っていたとおり、レアスキルのようだ。

「あの力は"トランスモーフ"。契約した相手の力をそのままに使えるスキルです。」

そう言うと、はなぽさんは驚いたような表情をする。

「いや、ドイル殿の使用した"クラフト"の力は、私のものを超えていたとお見受けしたのですが。」

そんなはずはない。
ステータスは、はなぽさんのものをコピーしていたし、俺がスキルでできることは、はなぽさんにもできるはずだ。

俺が二重の爆発を誘発し、毒の沼を完全に押さえ込み、はなぽさんとタダトモさんがごーぶすさんを捕獲することに成功した。

「はなぽさん、タダトモさん。」

俺は"クラフト"を使い。隆起した地面を整える。さらに、ミコエルの魔法でできるだけ更地にする。猛毒に触った大地は、色が変色してしまっているため、くり抜いてクラフトで押しかため、いったん箱状のものにして並べておいた。毒が抜けるか消えるまではこのままにしておくしかないだろう。

ミコエルの契約書を解除し、地面に着くと、2人のところへ駆けて行く。

「ドイル殿、さすがですな。」

はなぽさんからの謝辞に答える。タダトモさんは、ごーぶすさんを抱えたまま、小屋へと向かった。気絶しているのを介抱するようだ。

「いやいや、うまくいったのもはなぽさんのおかげですよ。"クラフト"、さすがです。」

今回、毒を抑えることができたのははなぽさんがスキルを使わせてくれたおかげだ。

タダトモは、その装備のまま完成する直前の檻の中に突入した。そして、檻が完成する。

「隊長、あなたは僕が止めてみせます。」

タダトモは羽根を広げているごーぶすに突進する。まだ一度切れた毒は噴出していない。

タダトモはごーぶすを背後から捕縛。そして、羽根を無理矢理折りたたんだ。

同時にごーぶすを包んでいた光が消える。

「タダトモさん、そのまま隊長を捕まえておいてください。ソウルサンドで、残った毒を抑えます。」

スキルが解除されても、毒は残る。

ごーぶすの周囲に残ったドイルも切り分けることができなかった細かな毒をはなぽは、砂で覆っていく。

その隙にタダトモは、隊長を捕まえたままその場を離脱。こうして、スキル"成レ果テ"をひとまず抑えることに成功したのである。

はなぽとタダトモが投げたものは"クラフト"で作られた黒い塊。

「弾けなさい。"ソウルサンド"」

はなぽの詠唱で、黒い塊が弾ける。それは砂を極限まで固めたもの。

弾けると同時に凝縮された砂は形を変える。それは"檻"。ごーぶすの周囲を囲うように次々と砂が鋭い槍のような形となって地面に刺さる。

「本来は大型の魔物を捕獲するための檻ですが、今回は縮小したものですよ。タダトモさん、行ってください。"メモリア"。」

はなぽはタダトモに声をかけると同時に魔法を唱えた。

「はい、あとは任せてください。」

タダトモの身体の周りに鎧が出現した。これは、以前、はなぽがタダトモに合わせて作り出した鎧。ヘルメット、レギンス、チェストプレート、ブーツ、アームからなる装備品だ。本来は、洞窟内などの安全な作業のためのものだが、今回はちがう。

はなぽとタダトモは、ごーぶすを止めるために動いていた。

「はなぽさん、ドイルさんが。」

走りながらタダトモは、ドイルの魔法を見た。土の壁が次々と毒の沼を覆い、今まさに大きな金属の板ができていた。

「毒を閉じ込めるつもりのようですな。つまり、隊長から毒の切り離しができるということ。」

はなぽは、目の前にごーぶすの姿を捉えていた。羽根を広げ、身体が発光している。スキルが発動しているのだ。

「タダトモさん、ドイルさんの魔法に合わせて我々は隊長を……。」

その言葉が早いか遅いか、ほぼ同時のタイミングでドイルの魔法が地鳴りのような音を鳴らしていた。

はなぽは、ドイルが毒を止めることを微塵も疑っていなかった。

地鳴りが止むとドイルの目の前には、氷の柱が立っている。はなぽにはドイルの考えが読みきれないが、毒は止まったはずだ。

そして……

隊長を囲う光が弱まっているのをはなぽは見逃さなかった。スキルが一時的に破られた印だ。

「タダトモさん、いまです。」

はなぽとタダトモは、何かを投げた。

「氷震」
英語でFrost quakeと呼ばれるこの現象は、寒さによって地中の水が凍って起こる破裂である。カナダなどで見られる自然現象であり、プラスからマイナスに一気に温度が下がると、水が染み込んだ地面や岩が急激に膨張し、周りの地面や岩を圧迫して大きな爆発を起こす。

そう、単に爆発を氷らせても威力は全く弱まらない。そればかりか、圧縮された力が余計に外に漏れ出すだけだ。

だから、俺は空気中の気体を氷らせることで同様の現象を誘発した。

爆発に爆発をぶつけることで、その威力を相殺する。これが俺の選択だった。

最初の内部での爆発に次いで、さらなる爆発が起こる。これで毒は消えると信じるしかない。ダメだったときは、はなぽさんとタダトモさんを連れて逃げよう。ミコエルの契約書なら、一定時間は無敵なはずだ。

俺は、爆発の様子を見守りながら、はなぽさんとタダトモさんがごーぶすさんを止めてくれていることを祈っていた。

狭い空間で爆発が起こるとすれば……

1.火炎が伝播。
2.燃焼によって引き起こされる温度上昇によって室内の気体の体積が一気に膨張。
3.閉鎖空間の圧力が急激に高まる。
4.圧力に耐え切れなくなった弱い部分が割れ、そこから一気に高圧の気体が噴出。

こうなるはずだ。もし爆発しても横の壁は分厚くて硬い。とすれば、蓋をした上に力がかかって、蓋が飛び上がることになる。爆発しなければその時は燃えるだけで済む。

そして、ムーンゲイザーが発動した。

閉じ込めた毒の中で爆発が起こる。

ボンッという火種の音と同時に、閉じた空間からゴゴゴゴゴという音も聞こえる。

とすれば、ごーぶすさんの毒は可燃性のものだ。

「来る。」

大きな爆発が起こったことで、カタカタと蓋にした板が震えている。そして、次の瞬間、轟音と共に蓋が大きく浮いた。

「"フリージングコフィン"」

蓋が浮くと同時に俺は魔法を唱える。縦に起こった爆発は、外に出た瞬間、拡散する。それを氷の壁で止める。

さらに、俺が凍らせるのは、爆発ではない。爆発によって生じた"大量の気体"だ。

「これで毒の沼に蓋をしてやる。」

ドイルは"TOMOKI++の契約書"を発動し、鉱物の巨大な板を持ち上げ、土壁の上に置いた。これで完全に密閉されている。

よし、次だ。

…………

"ミコエルの契約書"を使用します。

…………

タブレットが光る。密閉した状態で、魔法ですべてを吹き飛ばす。詠唱時間のない、ミコエルのスキルなら毒の沼が侵食する前に何とかできるはずだ。ドイルは魔法の準備に入る。同時に、ドイルは視界の端で、はなぽさんとタダトモさんが動いているのを捉えていた。

「タダトモさん、いきますよ。」

はなぽさんは、ごーぶすさんの背後にいる。

「はい。ミライノートでも確認済みです。」

はなぽさんが"クラフト"で何かを作ったようだ。ごーぶすさんのことは任せるしかない。

「いくぞ。"ムーンゲイザー"」

この爆発魔法は、半径1メートル程度の爆発を引き起こす。そして、その特徴は、詠唱者から離れている場所で爆発が起こることだ。

その特徴を利用して、密閉した空間の中で爆発させてやる。

隊長と毒の沼を隔離するためには、隊長の周囲を囲う必要がある。それなら……

ドイルは、少し大きめの石を拾い"クラフト"を使用する。すると、そこには鉱物で出来た板が錬成された。

「これがあれば、次は、こいつだ。」

…………

"TOMOKI++の契約書"を使用します。

…………

TOMOKI++さんの契約書を使い、パワーをあげる。契約書を解除しても大丈夫なのかと思うだろうがクラフトで作成したものが壊れるまでなくならないことは、ミコエル神殿のイスで確認済みだ。そう、これを使って、こうする。

ドイルは先ほどの板をごーぶすのところに向けて真っ直ぐ投げる。神の力の投擲だ。届かないわけがない。

ズゥン

音を立てて、ごーぶすの周りの地面やな鉱物の板が刺さる。それは次々と飛んできて、ごーぶすと毒の沼を鉱物の板が切り離した。

「成功だ。あとはもう一度。おらっ!」

力を込めて地面を殴り、掘り返す。
鉱物を含んだ地面だ。
…………

"わんわんPの契約書"を使用します。

…………
再び"クラフト"を発動。そこには先ほどよりも巨大な金属の板が出現していた。

契約した者のスキルを使用できるスキルなど聞いたことがない。相手と契約しなければ使用できないようだが、一度契約した者のスキルであれば関係ないのだろう。実際、ドイルがスキルを使用していることをはなぽ自身は何も感知できない。自分のスキルを使われていることも言われなければ気がつかないかもしれない。

「使い方次第では恐ろしいスキルですな。」

タダトモさんはゴクリと唾を飲み込んだ。

「タダトモさん、我々も隊長を止める準備をしましょう。ドイルさんならきっと、あの毒を止めてしまうでしょうから。」

2人はごーぶすを止めるために動き出した。

その間にも土壁が次々とできていく。

…………

ドイル
種族:人間
固有スキル:トランスモーフ、クラフト
レベル:35
経験値:ーーーーー
体力:1020
魔力:430(800)
攻撃:650
防御:890
敏捷:350
状態:素材鑑定LV5、仕上げLV5、発掘LV5、錬金LV5

…………

毒をほぼすべて囲い終えたときには魔力が半分近く減っていた。だが、まだだ。

「次は隊長と、毒の沼を隔離する。」

俺が"クラフト"で作り出すのは、地中の鉱物を使った壁だ。はなぽさんのスキルがどの程度魔力を使うのかを考えている暇はない。"プリズマリン"のように相手を閉じ込めることができれば何とかなる。

どんな鉱物がどう変化するのかなんて難しいことは分からない。だが、壁をつくるだけならそんな小難しい操作は必要ない。

「"壁"を作って毒を囲め。」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

スキルの発動と同時に地鳴りがする。

毒の沼は、TOMOKI++のパワーで地面に入ったヒビに阻まれ、前に進めていない。土の壁もある程度は効果があったようだ。

ズオッという音と共に、地面の亀裂から壁がせり上がる。そして、次々に左右へと地面からせり上がった壁が展開されていく。それは分厚い土壁。それほどの高さはないが、確実に毒の沼を囲んでいく。

「あれは、"クラフト"じゃないですか、はなぽさん。」

タダトモさんが驚きの声をあげる。

「そのようですな。あれが、ドイルさんの本当の力ですか。」

アナザーストーリー:呪詛師の力11 

「毒はなくなりましたが、しばらくは安静に越したことはありません。明日には歩けるようになるでしょうがね。」

金星伊津可は少し怪しい笑いを浮かべながらも、春沢翔兎を見つめている。どうやら助けられたことを良かったと思ってくれているようだ。

「団長、金星伊津可さん、出立しましょう。このペースならあと数日でクロスフェードに
着くはずです。」

one my self に促されてkentaxと金星伊津可はそらうみれいに別れを告げた。

去っていく剣闘師団と魔法師団を見送りながら、そらうみれいは思う。

「銃、見つからなかった。」

グモォォォという音ともにそらうみれいの口の中から銃が現れた。

「バレたら、殺す。」

そう言って、そらうみれいはまだ眠ったままの春沢翔兎を抱いて、スキルを発動した。

これは、セレスティア草原で起こった偶然の邂逅。この出会いが、吉と出るか凶と出るか。今まだ運命だけが知っている。

アナザーストーリー:呪詛師の力10 

そらうみれいも同じように頭を下げた。

「おお、治ったのか、徳皆無。」

kentaxがやってきた。

「マキエイさん、ありがとな。これで、剣闘師団もクロスフェードに帰れそうだわ。」

そらうみれいにとって、水を生み出すことは造作もない。これで春沢翔兎が助かるならどうということはなかった。

「kentax団長、今は金星伊津可です。お間違えなきよう。」

毎回の如く間違えられているのではないだようか。

「会うたびに違う気がしてわかんねえんだよなぁ、副団長さんは。」

kentaxは悪気がないようだ。

「それで、俺たちは国に帰るがマキエイさんたちは、これからどうするんだい?」

向こうからone my self もこちらにやって来ているのが見えた。

「ととさん、治るまで、休む。海で。」

そらうみれいは海獣族だ。海の中の方が力を発揮することができる。春沢翔兎を守るなら海中の洞窟にでもいる方が良いと考えていた。

アナザーストーリー:呪詛師の力9 

金星伊津可はとても楽しそうに笑いながら、魔法を唱える。

"餓鬼"

あらゆる異物を喰らうオリジナルの闇魔法。魔法の発動と同時に、金星伊津可の腕から黒い腕のようなものが伸び、春沢翔兎の脚に絡みつく。すると、腕のようなものがビクビクと痙攣し、春沢翔兎の脚の毒で変色した部分から毒を吸い取り始めた。その様子は、まるで脚から血が抜かれているようだった。

徐々に春沢翔兎の脚の色が元のピンク色に戻っていく。毒が抜かれている証拠であろう。数分間で春沢翔兎の脚は元に戻った。

30分ほどが経過しただろうか。そらうみれいも、剣闘師団への水の配布を終えて戻ってくると、そこには顔色の戻った春沢翔兎が横たわっていた。

「ととさん、治った。」

そらうみれいは少し嬉しそうだ。

「もう大丈夫でしょう。毒は抜いておきましたから。」

先ほどの呪詛師だ。

「改めまして、金星伊津可です。魔法師団の副団長を勤めております。」

そらうみれいに頭を下げる。

「マキエイ。ととさん、ありがとう。」

アナザーストーリー:呪詛師の力8 

そらうみれいは心配そうに春沢翔兎の方を見ながらも、自分にできることをやるしかないとkentaxについていった。

そらうみれいはスキルで水を生み出し、剣闘師団に配っていく。"空ノ水"がこれほど役に立つとは、そらうみれい自身も思っていなかった。

徳皆無、金星伊津可は呪詛師である。いわゆる二重人格であるが、これは徳皆無のスキル"ひとりごと"の力だ。初めてスキルが発現した時から、徳皆無は自分の中にもう1人の自分がいることを感じてきた。そして、その人格を自分はいつでも自由に入れ替えることができることも知っていた。徳皆無は呪詛師としての力を持っているが、金星伊津可は2つの人格の内でも"回復"や"治療"に特化した魔法を使いこなす。逆に、徳皆無は"攻撃"に特化しており、彼を知る者たちは、徳皆無のことを「人折り」と呼び恐れている。

金星伊津可は、春沢翔兎に近づき、手をかざす。まるで何かを読み取っているようだ。次に、毒が付着した脚に手をかざす。

「2種類の毒。これはまた面白い解毒をしている。」

アナザーストーリー:呪詛師の力7 

「安心しろ、魔法師団の呪詛師は優秀でな、毒の類には詳しいんだ。さて、こいつらを連れて魔法師団を迎えに行くぜ。水を待ってる奴らもいるからな。」

kentaxがそらうみれいを、one my self が春沢翔兎を馬の背に乗せ、移動する。

しばらく行くと目の前に剣闘師団の本隊が現れる。そして、すでに到着していた魔法師団が迎えてくれた。

「毒にやられた方はどちらに?」

本隊と合流するなり、声をかけてきた一人の魔法使いがいた。魔法師団のローブに身を包んでいるが、手には呪詛師であることを表す動物の骨でできた腕輪をつけている。

「こちらです。徳皆無さん。」

one my selfが春沢翔兎を抱いて馬から下ろす。どうやら春沢翔兎は、運ばれている途中に再び意識を失ったようだ。

「"こちら"の私は、金星伊津可ですので。」

どうやら2つの名前を持っているらしい。

「あいつに任せとけば大丈夫だ。すまねえが、マキエイさんはこっちに来てくれ。」

アナザーストーリー:呪詛師の力6 

kentaxが近寄ってくる。そらうみれいは警戒しつつも、春沢翔兎のそばを離れるわけにはいかなかった。

「水、あげる。」

そう言うと、そらうみれいはスキル"月ノ水"を発動する。そらうみれいの周囲に現れた水を見て、kentaxは驚いたようだ。

「これがマキエイさんのスキルか。すごいもんだな。この水は、飲めるのかい?」

そらうみれいがうなづくと、kentaxは水に手を伸ばして掬い取り、口に含んだ。

「これはうめぇ。最高だ。砂漠地帯で飲み干しちまってな。もし良かったらなんだが、部隊のやつらにも飲ませてやってくれ。代わりに、お仲間は必ず助ける。」

そらうみれいはもう一度うなづく。この状況では、魔法師団を頼る他ない。

「団長、連絡がつきました。まもなく到着します。"呪詛師"が同行しているそうなのでもう大丈夫です。」

one my self がメッセージを終えてやってきた。呪詛師。聞き慣れない言葉だが、広義にはシャーマンの一種である。信ずる神から時には悪霊にまで祈願し、敵を呪う魔法を発動して戦うことで知られている。

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