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アナザーストーリー:団長の憂鬱5 

「だから、別にそんなんじゃねえって。真面目すぎて頭の中がお花畑になってるぜ。何でもいいからとりあえず、今度小金井ささらを連れてこい。いいな。」

そう言うと、kentaxはクルリと背を向けて歩き出した。

「誰が頭の中、お花畑ですか!今度言ったら雷に撃たれますから!」

あいつが言うと本当に雷が落ちそうだ。
雷使いの魔法師団団長は伊達ではない。

しかし、何度会議の内容を思い出しても嫌な気持ちが抜けない。

雨乞いの儀の話も聞いたが、そもそも良いのか悪いのかすらよくわからん。

四天王の話は特に危ない気がしている。
敵の情報がない戦争など勝ち目はない。
たった4人で世界を滅ぼすなんてことは俄かには信じられないが……。

「はぁ、めんどうなことにならなきゃいいがな。」

騎士団の団長の仕事がこれ以上増えないことを祈りつつ。

kentaxは、剣闘師団が待つ練武場へと向かって行った。団長の鬱々とした感情は、この後、部下に向けられることになるのだが、それはまた別の話である。

アナザーストーリー:団長の憂鬱4 

「いいんじゃねえの?どんな奴かわかんねえから、こっちから出す奴との相性が問題ではあるけどよ。」

剣闘師団と魔法師団は、戦闘時には共に戦うことも多い。学園を守ると言う命令を受けているなら尚更その可能性はあがる。

「それなら、そっちの小金井ささらって奴を連れて、お前一緒に剣闘師団のところに来いよ。連れて行く奴をそいつに選ばせればいい。」

我ながらいい考えだ。
騎士と魔法使いはお互いに相性が良いと引き合うこともあるらしい。

「そんな適当でいいのですか?合同訓練ならば手続きを踏んで……。」

真面目か。

「ちがう、ちがう。訓練なんかしねえよ。だから、うちには今のところ女騎士は居ねえから、組む男を自分で選びに来いって言ってんの。」

学園に通う同級生を選べと言っているつもりなのになぜ合同訓練の話になるんだ。

「組む男を選ばせるなどと、なんという。そ、そんなお見合いのような色恋を戦の世界に持ち込むなど……。」

色恋の話はしてねえ。

アナザーストーリー:団長の憂鬱3 

「剣闘師団と魔法師団から1名ずつ出すとのことですが、kentax団長はもうどなたか候補がいらっしゃいますか?」

さすがに適当に決めるとは言いがたいな。

「何人かは候補がいるし、若い奴は多いからな。訓練サボって学園生活ができるんだから希望者は多いだろうし、万が一にも敵との戦闘になることを考えるとあんまり弱っちいのはな。」

お?どうやら向こうも考えを言いたそうだ。

「お前のところはどうなんだよ、魔法師団団長さん。」

「魔法師団はそれほど若い者は多くない。ある程度の力がある者というとかなり絞られてしまう。」

それで悩んでるから、話を聞いてきたのか?

「誰を出すつもりなんだい?」

とりあえず聞いてみよう。

「小金井ささらはどうかと考えている。」

どこかで聞いた名前だ。

「おお、例の"分身使い"か。」

噂でしか聞いたことがないが、なかなかの期待の新人と言う話は聞いている。

「そうです。彼女はまだ若い。一度、外の世界を知ることも必要かと思いまして。」

あんたも若いだろうという野暮なツッコミは無しだ。

アナザーストーリー:団長の憂鬱2 

「結構です。kentax団長はすぐそうやってご飯に誘うんですから。もっと団長としての自覚をもってもらいたいです。いいですか?私たち団長という役職は部下に示しを……」

またこの話かよ。会うたびに同じようなことを言われている気がする。
飽きねえなぁ、こいつも。
真面目が服着て歩いてるみたいな感じだ。

「おいおい、そんなこと言うために呼び止めたのか?あんまり生意気なことばっか言ってると、その服、切り刻んじまうぞ?」

笑いながら飄々と受け流す。
剣闘師団は戦闘集団だ。
明日、戦争が始まれば死ぬ者が出る。
だから団長の俺が一番今を楽しまなけりゃ、部下に示しがつかねえ。
kentaxなりの団長としての流儀なのだ。

「服を!?ああ、いえ、もう良いです。そんなことのために呼び止めたのではなく、先ほどの王からのご依頼について確認しておきたくてですね。」

小言は収まったようだ。

「ああ、学園への若手の派遣ってやつか?」

剣闘師団には若い騎士も多い。
適当に戦わせて、行きたいやつを行かせようと思っていたが……。

アナザーストーリー:団長の憂鬱1 

「あ〜やっと終わった。」

肩を回しながら廊下を歩く。
ああいう堅苦しい話し合いをすることには異論はないが、どうにも政治的なことばかりを気にする奴らとはノリが合わない。

「なんか嫌な予感がするぜ……。」

これは戦士の勘だ。長年、騎士としてファンド王、いや、ぐへへPに仕えているが、得体の知れない漠然とした不安を感じたのは今回が初めてだ。

「kentax 団長。お待ち下さい。」

考えごとをしていると後ろから声がかけられた。パタパタと軽い足音が背後から近づいてくる。

「どうしたんだい、泡麦ひえ魔法師団団長殿。」

振り向きながら戯けた口調で名前と役職を告げる。

「もう、茶化すような言い方はやめてください。会議、お疲れ様でした。」

泡麦ひえ。魔法師団の団長のため、役柄は同じなのだが、どうにも若い雰囲気でつい年下を扱うような態度になってしまう。

「わざわざ呼び止めるなんて、なんか用事かい?それとも、飯でも食いに行くか?」

普段はお互いに戦場にいたり、後進の育成をしており多く、団長同士が顔を合わせることは少ない。

外伝:出会い5 

私より少し背が高い。
整った顔立ち、澄んだ瞳。
彼は私にとって近くで見る初めての男の子だった。物珍しそうに、ずっと顔を見ていると男の子は私の前に低くしゃがんで突然私の手をとった。

「僕はファンド。セレスティア王国の王子です。お名前を教えて頂けますか?」

近い年には思えない口調と雰囲気。

「ヲキチ……と申します。」

スカートの端をもってご挨拶をしようと思ったが、片手を握られていて、ぬいぐるみを抱いていてどうしようもない。

ちょっと困った顔をしてしまったのかもしれない。でも、彼はニコリと笑うとこう言った。

「可愛いぬいぐるみですね。その子のお名前も教えて頂けますか?ヲキチさん。」

私が初めての恋に落ちるのにそれほど時間はかからなかった。

外伝:出会い4 

謁見の間という広い場所に通されると、紅い絨毯の先に綺麗な椅子が置かれており、そこに王様と王妃様が座っていた。

何人もの兵士たちが王を護るために絨毯の横に並んでいる。

王様の横にもう1人誰か立っている。
小さな男の子だった。
お父様に連れられて私は絨毯を歩き、王様の前にたどり着いた。
お父様が膝を折ってその場にしゃがむ。

私は真似をしようとしたが、可愛いお洋服を汚したくなくて困っていた。
お父様は「座りなさい」と言ったけれど、王様が「よい、可愛らしい服が汚れてしまうといけない。」と言ってくれた。

お父様は王様とお話をした。
私にはよく分からないお話。

私はぬいぐるみを抱きながら、静かにお話が終わるのを待っていた。

ふと、王妃様と目があった。
綺麗な人だなと子ども心に思った。
すると、王妃様がはニコリと笑って、立っている男の子に言った。

「ファンド、私たちのお話が終わるまで彼女をエスコートしてさしあげなさい。」

「わかりました。お母様。」

そう言うと、男の子は私の前まで歩いて来た。

外伝:出会い3 

実は当時、セレスティアの国内で複数の強盗事件が発生しており、強盗が私の父の領地付近で目撃されたため、兵士たちが派遣されて来ていたらしい。父が家に帰っていたのもその調査のためだったそうだ。

私を助けてくれた兵士の名前は知らない。お父様は十分なお礼をしたと言っていた。

そして、私は数日後に退院した。

退院のお祝いに、お父様が新しいぬいぐるみをくれた。

お母様はずっと手を繋いでくれていた。

退院したその日にお父様は「御礼を言いに行く」と言って、私をとても綺麗なお洋服に着替えさせて馬車に乗せた。

お誕生日の時に着るようなお洋服で、とても嬉しかった。でも、それ以上にもらったぬいぐるみが嬉しくて、私はずっとぬいぐるみを抱いていた。

着いた場所は王城だった。何もかもが大きくて、たくさんの人がいたことくらいしか覚えていない。お父様が言うには、注意も聞かずぬいぐるみを抱いたまま、お城の中を走り回っていたそうだ。

そのまま、私は王に面会した。
セレスティアの王、現国王ぐへへPの父親にあたる先代の王様だ。

外伝:出会い2 

ドンドンドンドン!
ドンドンドンドン!
ドンドンドンドン!

「〜〜〜〜!」

ドアを叩く音が聞こえる?
誰かが何かを叫んでいる?

ううん、私は眠るの。
眠ったら朝になるはずだから。

私の記憶はそこで途切れる。
次に目が覚めた時には、私は病院のベッドの上だった。
起きたばっかりの時は何も聞こえなかったけれど、お母様が手を握りながら泣いていた姿だけは見た気がする。

私の家は火事になった。
私はセレスティアの田舎に住む小貴族の娘だった。先祖代々の土地を護り、静かに暮らしていた。
父は貴族として王城へ働きに行くこともあったが、それほど広くない領地を上手に治めていたと思う。
そんな小貴族の家にある日強盗が押し入った。父が偶然家にいたことで、強盗は撃退することができたが、強盗は自分たちが逃げるために、私たちの家に炎の魔法をかけていった。

強力な炎の魔法が、私の家に燃え広がるまで、そう長い時間はかからなかった。

私を助けてくれたのは、偶然近くを通りかかった王国の兵士だった。

外伝:出会い1 

まだ時々夢に見る。
迫り来る炎、紅く染まった部屋。
私は独りだった。
前の日の夜は、久しぶりにお父様に絵本を読んでもらった。
寝る前には額に優しくキスをしてくれた。
でも、目が覚めると、そこは炎の海。
お気に入りのお人形、いつも遊んでいたお馬さんの乗り物、お母様に欲しいと駄々をこねて買ってもらったウサギのぬいぐるみ。
私の世界の全てが燃えていた。

「お母様!お父様!」

あの時、本当にそう叫んだのかどうかは覚えていない。でも、夢の中の私は必死に両親を呼んでいる。

返事はない。

代わりに炎がパチパチ、パチパチと私を呼んでいるかのように音を鳴らす。
私はベッドから動けない。

世界が紅い。
息が苦しい。
喉が熱い。

目を開けていられない……。
私はベッドに横たわろうと思った。
そうすることで楽になれると思ったから。

これは夢だ、きっと夢だ。

布団をかぶってじっとしていれば朝にはお母様が起こしに来てくれる。

アナザーストーリー:アトラスの軌跡(序) 

噂が噂を呼び、吟遊詩人こるんの名は、レミルメリカ全体に知れ渡ることになった。

そして、人々はこるんならば、雨乞いの歌を創ることができる、歌うことができると信じるようになっていった。

吟遊詩人こるんは、レミルメリカの様々な土地に足を運び、歌っていた。
セレスティア、プロムナード……こるんはいく先々で歓迎された。

そんなこるんに、人々から雨乞いの儀のために歌を創ることが依頼されるまで、さほど時間はかからなかった。こるんは、自分のこと歌が役立つならと快諾した。

ミコエル神殿へ赴き、まきエルと交渉する役も自らこなしたのである。

ところで、レミルメリカにおいて、雨乞いの儀が行われた記録は過去に1度だけである。

レミルメリカ全体を巻き込んだ数十年前の大きな戦争の後、大地は水を枯らした。

人々は、水を求めて大天使ミコエルに助けを求め、その時、大天使ミコエルが地上に降臨し、人々に雨乞いの儀の方法を伝えたとされている。

そして、時は移り、現在。
再び、人々は雨を求めたのである。

アナザーストーリー:アトラスの軌跡(序) 

だからこそ、雨乞いの儀を執り行う際には大天使ミコエルを護るための厳重な警護の準備をせねばならない。

さらに、祈りの歌の効果を最大限に引き上げられる祭壇の設営、祈りを捧げるための信徒の招集なども必要だとなる。

"自然を操る"とはそういうことだ。

アトラスの軌跡の成功に必要なものは、大天使ミコエルのスキルだけではない。
そもそも捧げられる"歌"に込められた力が大きくなければ大天使に人々の祈りが届くことはない。
かつての雨乞いの儀に捧げられた曲は"伝説入り"を果たしたことで、人々の耳に触れることはなくなってしまった。

今となっては、どのような歌かを知る者はかつての神々と大天使のみとなっていた。

それほどの力を持つ新たな歌を創る者、"歌い手"が現れなければ儀式は成立しない。

しかし、レミルメリカの歴史の中で、世界を救える力を持っていた歌い手はたった1人。

たが、その者はすでにいない。

人々は待った。新たな"歌い手"の誕生を。

そして、いつしか噂が流れた。
歌を力に変える者、吟遊詩人こるんがいるという噂が。

アナザーストーリー:アトラスの軌跡(序) 

雨乞いの儀。

それは古来より引き継がれるミコエル教の儀式の1つである。

"地が乾き、水が枯れ、人が嘆くとき、天使へ祈りの歌を捧げるべし"

大天使ミコエルのスキル"大天使の加護"
信徒の祈りにより力を得るこのスキルは、祈りの歌によって最大限に引き上げられる。

そして、雨を望む人々の願いを聞き届けた大天使ミコエルは、祈りの歌を触媒に、天候すら操る魔法"Trails of atlas"……"アトラスの軌跡を発動するのである。

この魔法は三日三晩の間、天候を望むものへと変える。
莫大な魔法力を必要とするため、一度発動したアトラスの軌跡はどのような魔法でも解除できない。
かつて、神話の時代に"ある神"がレミルメリカの全てを大洪水によって洗い流したと言われている。その際に使われた魔法がアトラスの軌跡である。

しかし、大天使ミコエルと言えどもその反動は大きく、魔力をすべて失う。

つまり、儀式の後、大天使ミコエルは強力な魔法を使えない。もし、大天使を狙う者がいた場合、儀式は絶好の機会になってしまうのである。

「でも、さっきの椅子は少なくとも1年後まで壊れないってことですよね?」

ノートに書かれているならそういうことになるのだろう。

「そうですね。ノートに描かれると、その通りになりますから。」

タダトモさんは、マグカップが壊れるのが不思議そうだ。
はなぽさんのクラフトとは言え、自分のマグカップが壊れるんだから当然か。
1時間で何が起こるのか待って見るしかない。
待てよ?もう少し時間の感覚を短くすればいつ壊れるのか特定でき……

そう言ってみようと思った時、はなぽさんが会話に入ってきた。

「ひとまず、スキルの紹介は終わりましたかな?では、少しだけセレスティアの話を、と言いたいところなんですが、私、これから一度、王都に戻ららなければならないんですよ。」

はなぽさんは、こちらが話している間に礼拝堂の椅子の修復を終えていた。

仕事が早い。

「はなぽさんが戻るなら、僕も一度戻ります。」

どうやら王都に移動しながら話を聞くことになりそうだ。

「人には使えないですねぇ。でも、人の着てる服とかなら使えますよ。動物も試したことはありますけど、ダメでした。」

生物相手には使えないのか。
生きてるものにまで使えたら、すごいことになりそうなスキルだったけど。

「じゃあ、1年後にはもう無いものとかだと、どうなるんです?」

完全に興味本位だ。

「そうですねぇ。じゃあ、どうしようかな。えっと……。」

タダトモさんは辺りを見渡し、ポケットの中を探る。

「あ、これでどうっすかね。」

タダトモさんは先ほど、はなぽさんから渡されたマグカップを持ってスキルを発動する。

「これが10分後。」

ノートを見ると、中の飲み物が減っている。

「これが1時間後っす。」

おや?ノートには割れたマグカップが描かれたいる。

「あれ?中身だけ無くなる様子を出すつもりだったんすけど。う〜ん、つまり、1時間後にはこのマグカップは割れてるみたいですね。」

割れてる。マグカップを落としたりするのか?クラフトのスキルで作ったものでも、普通の木や石で作ったものなら壊れるのは先ほどの戦闘で確認済みだ。

ノートのページには、はなぽさんが直した椅子がそのまま投影されている。
背景はなく、写真を切り抜いたようなイメージだ。

「はなぽさん、この椅子は大丈夫そうです。」

タダトモさんは何を言ってるんだ?

同じ椅子がノートに出てきただけで変化はない。タダトモさんは不思議そうな顔をしている俺に気づいたらしたい。

「何も変わらないとわかんないですよね。」

そんな笑いながら言われてもな。

「ミライノートは触ったものの未来をノートに描く力なんです。」

「未来を描く力?」

聞くだけではよく分からない。

「ミライノートは、このノートに触ったものの1年先までの姿を映し出すことができるんですよ。1年は最長で、1番短いと10分後までですけどね。」

ミライノートとはそういうことか。
攻撃用のスキルではないが、検査士には有用な力であることは間違いない。
建物を触れば、1年後に立っているかどうかもわかるんだからな。

「それ、物だけじゃなくて人にも使えるの?もっと微調整もできる?」

聴きたいことが多すぎて質問だらけになりそうだ。自重しよう。

アナザーストーリー side シルバーケープ9 

フードの女が命令を下すと同時に、烏たちは島のあちこちに散らばっていった。

"掃除"の意味するところなど聞く意味もない。この島からあらゆる命が消えるまで、それ程の時間はかからないだろう。

あの烏たちの力は、おそらく白継に測れるようなものではない。

「さて、"監視者"さん。あなたにはお願いがあります。」

そう言って女はフードを取った。

「私はいな実、立花いな実。あなたたちが"四天王"と呼ぶ者。」

"四天王"。それは歴史上に名を刻む絶望。
なぜ、そんな者たちが、自分の生きる時代に動き出したのか。

「私たちは……世界に宣戦布告する。」

白継は自分の目の前にある"死"を感じることしかできなかった。

アナザーストーリー side シルバーケープ8 

「それに私、今、他のお仕事で忙しくてあなたに構ってる時間ないんですよ。ほら。」

フードの女が先ほど抜けて来た茂みの方を指差す。白継は、嫌な気配を感じ取り、そちらを振り向いた。

白継が見たものは空を埋め尽くす無数の黒い塊。烏の群れだ。

「あっ……あっ……。」

カァッ!!!

フードの女の周りを飛んでいた烏が大きな鳴き声をあげながら、女の肩にとまる。

どれ程の数がいるのか想像もつかない。
しかし、分かることがある。
あれはすべてを飲み込む"黒い絶望"だ。

「この辺りの島のいくつかを"私たち"の実験場にするために制圧しに来たんですよ。いいですよね?"監視者"さん。」

ゾクリ……。悍ましい程の殺意。
肌が痛い。内臓が締め付けられるようだ。
白継は自分が監視者だと知られていることなど、もはやどうでもよかった。

「それでは、烏たち。最初に言った通りです。必要な子たちは残して、それ以外はいりません。ちょっと"掃除"をしてきてください。」

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