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アナザーストーリー:選抜10 

「学園ですか。学園、学園、制服、制服のユキちゃん、ユキちゃんの制服。団長、行っても構いませんが、ひとつ聞いて頂きたいことが。」

発言の4割ほどは聞かなかったことにして、団長は話を続ける。

「なんですか?私にできることなら言ってくれれば王に進言してみますよ。」

命令とはいえ、一時的に魔法師団を抜けるのだ。小金井ささらも思うところはあるのだろう。

「ユキちゃん用の制服を作ってもらってください。あと、できればローブも。」

予想の右斜め上から、雷の魔法を打ち込まれたような気分だ。

「わ、わかりました。王には聞いておきます。えっと、ユキちゃんさんの服のサイズを聞いておいていいですか。」

ユキちゃんの制服に関する話が終わると、小金井ささらはユキちゃんを連れて部屋を出た。

楽に受けてくれたのはありがたいが、人選を間違えたかもしれないと少し思ったのは内緒にしておこう。魔法師団には少々変わった者も多い。
かくいう自分も人のことは言えない上に、その団のまとめ役を務めているのだからタチが悪い。

アナザーストーリー:選抜9 

小金井ささらは魔法師団の若手の中では指折りの実力者である。先日の魔物討伐の時には団員たちから「この程度の魔物より小金井ささらの方が怖い」とさえ言わしめたほどだ。違う意味が籠っているかどうかはここでは追求してはならない。

「それで、ささらさん、今日来てもらった理由なんだけど。」

「ユキちゃんかわいい。」

割り込まれた。話の腰が音を立てて砕けた気がする。

「う、うむ。かわいい、のだろうな。」

泡麦ひえは、どうにも返答に困ってしまったようだ。

「『ユキちゃんかわいい』というのは、私が自然に発してしまう言葉なので、団長は気にせずお話を続けてください。」

そんな相槌があってたまるか!と大声でツッコミを入れたくなる気持ちを抑えて話を続ける。

「コホン、今日ささらさんに来てもらったのは、他でもない。ファンド王及び、この魔法師団団長、泡麦ひえの命により、小金井ささらに我が国の学園に行ってもらいたい。」

小金井ささらは、泡麦ひえの言葉を人形の髪の髪を触りながら聞いていた。

アナザーストーリー:選抜8 

「小金井ささらです。入ります。」

魔法師団に支給されるローブを羽織った髪の長い女性が部屋に入ってきた。

「よく来てくれたね、ささらさん。」

魔法師団団長・泡麦ひえ。雷魔法を得意とする彼女は、魔法師団に入る以前は、冒険者として世界各地を旅していた経験がある。セレスティア草原で魔物を討伐していた時、前任の団長にスカウトされ、魔法師団に入ったと噂されている。そんな優秀な彼女が目をつけている魔法使い、それが小金井ささらだったのだが……

「団長、この子も一緒なんですから挨拶してあげてください。」

小金井ささらは、左腕に人形を乗せて髪を撫でている。

「あ、ああ、すまない。"ユキ"と言うのだったかな。よく来てくれた。」

小金井ささら。人形使い、ドールマスター等、彼女につけられる呼び名はいくつかある。

戦場でも、日常でも、常に彼女の側には人形がある。"ユキ"と名付けられたその人形を小金井ささらはまるで生きている人間のように扱うことで有名だ。

「挨拶してくれて、喜んでます。今日もユキちゃんはかわいいです。」

ドイル boosted


『授業案』
 学園の教壇に立つとなれば、やはり授業の目的、達成してほしい技能や得て欲しい知識、理解に至るまでの流れといったものを準備せねばなりますまい。

大勢の若者の前で、アドリブ全開に授業するなど、想像だけで喉のあたりが締め付けられる。
mai理事長の依頼とあれば、それは『知識の殿堂』の司書として、相応の内容を用意せねば。
学生たちには図書館に興味を持ってもらう、これがまず目標。
書を読むことで広がる世界、深まる知識にはどのようなものがあるか。魔術を修行中ならば、書物の重要性は知っているだろう。ここで念をいれてやりたいのは、やはり書に関わることの少ない武人。剣闘師団の候補になるような若者にはどういう本を勧めるとよいだろう?

『武経七書』はもう知ってるかもしれないから、異国の『三兵戦術の基礎』、『築城技術知識ガイドブック』も挙げてみようかしら。いやむしろ、学生たちに知っている本を挙げてもらい、未読の学生に向けてプレゼンさせるのもいいかも知れない……。

足元に猫がすり寄って、夕飯を催促するまで、司書の授業案づくりは続いた。

アナザーストーリー:選抜7 

「その辺の学生に比べたら、お前は頭1つ2つ抜きん出てるだろうけどな。言ってこい、三国。よし、よだか、呼びつけて済まなかったな。話は終わりだ。三国には追って命令を出すが、出発まではあまり時間もない。早速準備に入ってくれ。」

そこまで指示を出すと、2人は頭を下げて部屋を出て行った。それを見送ってからkentaxは、椅子に深く座りなおす。

三国奏、ボンドPの発言の真意には多少疑問を感じるが、正直なところ、これでよかったのかもしれない。
よだかは鍛えがいがある。あと数回でも大型の魔物を討伐させて、どこかで小競り合いの対人戦闘をやればもっと伸びるだろうとkentaxは思っていたのだ。これを機に鍛えるのも悪くない。

「こっちな何とか決まったか。さて、あっちはうまくやってんのかねえ。」

その頭の中では、推薦する者を独断で決めていたどこかの魔法師団の団長の顔を思い出していた。

アナザーストーリー:選抜6 

「あれはっ……相性の問題ですから。」

しかし、負けている以上、弱いという部分については否定できない。

「う〜ん、どうすっかねぇ。まあでも、本人の意志なら構わねえか。いいぜ、三国、俺から王様に言っといてやるよ。」

kentaxは戦力を欠くことになっても部下の意志を尊重するらしい。

「しかし、どういう風の吹き回しだ?お前、こういうのに首突っ込んでくる奴じゃねえだろ。」

入団の頃から三国を知っているkentaxにはどうにも違和感があるらしい。よだかは何も感じていないようだが。

「ちょっと面白い噂を聞いたっていうのはあるんですが、それ以前に学園って何となく面白そうじゃないですか。一度くらいエリート様たちに混じって勉強するのも悪くないでしょうし。」

面白そう。
たしかにこの男ならそう考えるのかもしれない。

アナザーストーリー:選抜5 

「学園へ行く若者をお探しだとお聞きしまして、よろしければ僕が行かせてもらおうかと思いまして、ええ。」

軽く眼鏡を上げる動作をする。

「あ〜三国、お前が行くのか。」

どうやら、kentax団長の選択肢には入っていなかったようだ。

「ボンドPも若手ですし問題ないのでは?」

よだかは、代わりを考えなくてよくなったからかどことなく嬉しそうだ。

「あのなぁ、三国の能力はお前も知ってんだろ。うちの団からすりゃ、こいつは貴重な戦力なんだよ。」

kentax団長のいう能力はスキルのことだ。たしかに三国奏、ボンドPは"他とは少し変わったスキル"の使い手である。

「ということは、私は貴重な戦力ではないと言うことですね?」

よだかの言葉にkentaxは顔を少し曇らせる。

「そうは言わねえけどよ、今んとこ、三国はおめぇより強えからなぁ。」

今のところと付け加えるのは、配慮ではなく正直な評価だ。
先日、kentax団長の思い付きで突然行われた団内の個人戦でも三国はよだかを破っている。

アナザーストーリー:選抜4 

「私にいくら言おうが、首を縦には降りませんよ。うちの団にあと若いメンバーって誰がいましたっけね。」

よだかも、自分が行きたくないから代わりに誰かを探しているようだ。剣闘師団の若い団員にとって、団は居心地が良い。上下の隔たりなく、実力で立ち振る舞いができる環境を好き好んで出ていく者は多くないだろう。

「給料も出すし、住む所も貸すって言ってんのに、何が嫌なんだか。女でも探しに行ってこいよ、まったく。」

kentaxは団長でなければ、自分が行くとでもいい出しそうな雰囲気だ。

コンコン

「誰だ。来客中だが、入っていいぞ。」

kentaxは先ほどまでの口調を突然団長としての威厳を出すものへと切り替える。

「失礼しますよっと。」

ドアを開けて入ってきたのは1人の男。メガネをかけ、飄々とした雰囲気だ。

「団長さん、困ってるみたいですね。」

三国奏。ボンドPの称号を持つ男。
プロムナードの出身で、幼い頃からいくつもの国を渡り歩き、なぜかセレスティア王国の剣闘師団入りを希望した。自由を好むが、仕事はできる。

アナザーストーリー:選抜3 

剣闘師団には意外と若者も多い。魔法使いと違い肉弾戦も多くなる剣闘師団は、ある程度の年齢になると引退して指導者の側にまわる者も多いのだ。

とはいえ、そこは肉体を鍛え抜いた者たち、人間でも30代、40代は現役だ。異種族の中には寿命がかなり長い者もいるため、100年近く戦い続けている者も剣闘師団には席を置いていたりする。

「行きたがらなくて当然ですよ。自分を鍛えて戦うために団に入ったのに、今さら学園で勉強しろなんて言われても困りますって。」

正論である。

「俺が困ってるんだっての。ファンド王からの直々のお達しだぜ?1人くらい殊勝な奴がいてくれてもいいだろ。なあ、よだか。」

kentax団長はこんなことを言っているが、団長命令として団員に命令することは決してない。

それが分かっているからこそ、団員たちは自分の意見を主張できるのだ。誰も行かなかったら、王に直接、行きたがる奴がいないから無理だと頭くらい下げに行くだろう。それゆえに、kentaxは若くして団長の地位にいる。

アナザーストーリー:選抜2 

先ほどのよだかの返答がなかったかのようにkentaxは言葉を続ける。

「はい。お断りします。」

またしても即断。

「お前なぁぁぁぁ!なんで速攻で断るんだよ、悩めよ!そして行けよ!団長からの指名なんだぞ!」

突然の団長のキャラクターの崩壊にも、よだかは動じない。

「団長、若いのに片っ端から声かけてるでしょう?もう皆知ってますよ。」

セレスティア王国剣闘師団は、強さを求める集団である。だからこそ、団長であるkentaxは団員全員に自己主張を許可することを徹底してきた。戦場では上司も部下もない。上が間違った判断をした時、現場にいる下の者が意見を言えずに命を落とすことがあってはならない。ただ、強くあれ。クリスエスや泡麦ひえには示しがつかないとか、他の場所でも自己主張が強すぎるとか色々言われるが、それはそれだ。

しかし、今回ばかりはそれが仇になった。

「仕方ねえだろ、誰も行かねえってんだから、とりあえず若い奴に声かけてんだよ。よだかで3人目だ。ったく、なんで誰も行きたがらねえんだよ。」

アナザーストーリー:選抜1 

セレスティア王国剣闘師団は、選ばれし者たちの集団である。有事の際には王国最大の戦力として前線で戦い、日頃は鍛錬に余念なく、王国近隣の魔物討伐も行う。その命懸けの仕事は常に死と隣り合わせと言われ、登竜門と呼ばれる厳しい選抜試験で振るい落とされる者は後を絶たない。はずなのだが……

コンコン、ドアがノックされる。
「お〜開いてるから入れ、入れ。」

日夜厳しい戦いを強いられているとは思えないほどの緩い言い方である。

「失礼します。kentax団長、お呼びですか?」

ドアを開けて入って来たのは精悍な顔付きの若者。それなりにしっかりした体躯をしているが、まだ幼さの残る出で立ちだ。

「よだか、お前、学園に行け。」

入って座る暇もなく、よだかと呼ばれた若者に命令が下る。

「嫌です。」

返答も一瞬だった。その間、まさに1秒にも満たない。

「よだか、いいか、お前はまだ若い。剣闘師団で戦うだけが人生じゃない。同世代の友人を作り、見識を広めて来るんだ。だから、な?学園に行ってこい。」

はなぽさんやごーぶすさんも、学園の卒業生らしい。学園では、自分のスキルや魔法の適性に応じて学ぶ内容が定められることになるので、かなり幅広い学びができるようだ。

タダトモさんは、学園の専科生、話を聞く限り大学院生のようなものらしく、学園の生徒でありながら外での活動を許されている者にあたるらしい。はなぽさんと共に働いていることもあるが、他にも建造士に似た職業があるらしく、検査士はわりと仕事があるそうだ。

学園自体は3年の在学で卒業できるらしいが、学年という概念がなく、学びたいことを学ぶという体制がとられているため、長い人なら8年くらいいる人もいるとのことだ。ここでは、人とは言っているが、もちろん多種族の混合である。

話を聞く限り、俺も学園に興味が湧いた。

「元々レミルメリカの人間じゃない俺も、学園に入ることってできそうですか?」

倍率の高い入学試験があるらしいが、大天使ミコエルとTOMOKI++さんのスキルがあれば、何とかなるだろう。決して不正を働くつもりはないぞ?しかし、社会人になって勉強はからっきしだからな。少し心配しながら、俺は返答を待った、

セレスティアの首都クロスフェードにある学園"ORiON"、読みはオリオン。

Old Remirmerica Import Organization of all Nations
古きレミルメリカは全国の組織を意味する

頭文字を組み合わせてオリオンと呼称している。"月の崇拝者"こと、ナチュラルPという理事長の元、現国王であるぐへへPの先代の頃に作られた学園である。敷地も広く、王城と並んでクロスフェードを代表する施設のようだ。

学園の特徴は、各国の貴族や王の一族から平民まであらゆる層の者たちが集まっていることである。学園の中では一切の身分や権力が適用されず、身分による差別、権力を振りかざすことを行った者は罰せられるくらいには徹底されているらしい。つまり、身分に関係なく魔法や武技の才能がある者たちを集めている場所。さらには、世界にあるすべての国から資質と能力のある者たちの入学が許可されている。レミルメリカには、いくつかの学校のようなものはあるらしいが、学園に入った者はどの国でも重要な役職につくという将来が約束されることもあって、かなりの倍率になっている。

「ドイルさん、16、7歳くらいじゃないんです?」

タダトモさんには高校生くらいの年齢に思われていたらしい。

「私も同じくらいだと思っておりました。そのローブを見る限り、魔法使いの家系ですな。」

今着てるローブはミコエルから転生された時に勝手に着用していたものです!とは言えないし、はなぽさんがそう思うならもうその理解でいいや。
ということは、実年齢より若く見られているらしい。転生のボーナスで若返ったのかもしれない。そういえば、鏡も見ていないから自分の顔もどうなっているのか分かっていなかった。
そうか、タブレットがあるなら、自撮りをすれば顔は見れるな。このタブレットには写真を撮影する機能はあったはずだ。

「学園の生徒じゃないんですか?」

学園?レミルメリカに来てからは初めて聞く単語だ。

「俺は学園の生徒じゃないですよ。そもそも学園ってなんです?」

タダトモさんだけでなく、はなぽさんも驚いた顔をしている。

「転生したと言うからアレですが、学園に通わずその強さとは、いやはや驚きですな。」

学園のことを教えてほしいと頼むと、2人が説明してくれた。

外伝:居室の一幕4 

だから、昔食べていた料理を再現してみたくなって厨房に立ったのだ。それに……ぐへへPに私の故郷の味をってちがう。そんなこと考えてる場合じゃない。

「あっ、あれはちがうの。」

とりあえず否定してみるが、脈絡もない。

「ん?」

しかも机のセッティングを勝手に進めているぐへへPの耳には届いていなかったようだ。

「なんでもないです〜っ。」

よかった。聞かれてなかった。

「じゃあ、ほら、二人で食べよう違う種類のものを買ってきたんだ。」

いつもとは違う。広い食卓で食べる専属の料理人が作るような高級な料理ではない。

それなのに、この美味しさは何だろう。

ぐへへPが街で見た、たわいも無い話を聞きながら、2人の午後の時間は進んでいった。

外伝:居室の一幕3 

ぐへへPがポテトと呼んだ箱に入ったものを手渡してくれたので、口に入れてみた。
サクッとした食感の後にジュワッと油が広がる。噛むとすぐにほどけるようになくなってしまうので、何本でも食べられそうだ。

「早いもの勝ちです。そもそも、食事というものはまさに闘いのようなもの。美味しいものは、先に食べた者が勝つのです。」

そう言いながらポテトを口に放り込む。

「ちゃんと分けて一緒に食べようよ、いいけどさ。元々、君のために買ってきたんだし。」

ぐへへPは笑いながら買ってきたものを机の上に並べている。ハンバーガーとポテト以外にも飲み物がついているらしい。鳥の肉を揚げたものもあると教えてくれた。

「ヲキチ、最近ずっと城にいたから、たまにはお城の外の物も食べてみたいんじゃないかと思って。お城の料理ばっかりじゃ飽きるだろ?この間も、勝手に厨房を使って料理してたって聞いたし。」

バレてる。これだけ長くお城にいると、同じメニューが出てくることも多い。それに、もともと田舎の方に暮らしていたこともあって、堅苦しい料理ばかりを食べることに慣れていない。

外伝:居室の一幕2 

「ヲキチ、ただいま。」

ドアを開けて、ぐへへPが入ってくる。外遊の服装をそのまま身につけているため、本当に帰って来てすぐに部屋に来たのだろう。

「おかえりなさい。」

よく見るとぐへへPが手に何か持っている。

「今日は、街で流行している食べ物を買ってきたよ。」

袋に入った"それ"は部屋に入ってきた時から、香ばしい香りを漂わせていた。

「これは?」

中身が気になる。
この香りはおそらく肉の脂だ。

「ハンバーガーって言うらしい。パンに肉や色々なものを挟んだ食べ物だって。」

袋の中から紙で出来た手のひらに収まるくらいの包みを出す。

「紙の包みに入っているのに、とても美味しそうなにおいがするのね。そっちは?」

匂いだけで食欲がそそられる。
もう一つ、今度は上の部分が開いた箱のようなものに刺さった大量の細長いものが見える。こちらは油で揚げたもののようだ。

「これはポテトって言うらしい。細くしたジャガイモを油で揚げたもので、塩をかけてあるからそのまま食べられると……ってこら、説明してる横で先に食べるなよ。」

外伝:居室の一幕1 

王城にある居室でヲキチは一人、王の帰りを待っていた。ぐへへPは、部下たちを連れて市街地の視察へ出ている。以前に話した時には国民の声を国の運営に活かす、とそれっぽいことを言っていた。連れて行って欲しいと言おうかと思ったが、ヲキチが行くと少しややこしいことになる可能性があるため、最近は少し自粛していた。

周囲からは王妃と呼ばれているが、実はヲキチはまだ正式には王妃ではない。婚約はしている。結婚の予定はある。近々、両親への挨拶という一大イベントも行われる予定だ。でも、ちゃんと王妃になるまでは、あまり王の横に並んで歩くようなことは避けた方がいいかもしれないと勝手に思っていた。ぐへへPはそんなこと気にも留めないだろうが、こういうのは手順が大事なのだ。

コンコン
部屋がノックされ、外から声が聞こえる。

「ヲキチ様、ファンド王がお戻りになりました。すぐにこちらへ来られるそうです。」

どうやら何事もなく帰って来たらしい。
良かった。普段は王城で仕事をこなすことが多いからか、たまに外に行くと言うとつい心配になってしまう。

アナザーストーリー:"擬態"の者5 

完全に納得はしていないようだが、2人は何も言わなかった。

「それで、ご依頼は?」

夕立Pの方から話を戻してきた。

「うむ、夕立P、お前にクロスフェードにある我が国の学園に行ってもらいたい。」

剣闘師団、魔法師団の団長たちの準備を他所に、国の中枢からは別の力が学園に送り込まれようとしていた。

アナザーストーリー:"擬態"の者4 

「言っただろう、特異体質だと。魔法なのかスキルなのかすら不明だ。こやつの正体は私ですら知らぬ。だが、他者に化けることにおいては一級品でな。それゆえに"擬態"。」

しおまねき、m-aの2人はまだ驚きを隠せない様子だ。

「今しゃべっているこの声と話し方も、その辺にいた人のやつを適当に拝借してるだけなんで、俺自身のものではないですけどね。それで、クリスエスさんからの依頼は久しぶりですけど、値段が破格ですからね。内容と値段によっちゃ、引き受けますよ。」

夕立Pの力は危険だ。悪意をもって使用すればあらゆる犯罪を起こすことすらできる。しかも犯人に擬態して。

「クリスエス殿、かの者の存在は、もはや国家レベルの危機なのではないですか?」

m-aは外交官として国の危険を無視できない。

「悪いことしようとは思ってないですって、それに俺のこれはクリスエスさんには通じないんで。」

スキル"異端審問"。クリスエスを異端審問官たらしめているスキルである。

「そういうことだ。だから、夕立Pのことはこの私が監視している。」

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