「い、いえ、かわいい人形だなと思って、つい。」
手に乗せている人形がおそらくユキちゃんというのだろう。
よだかさんがこっちを不審な顔で見た。そりゃそうだよな。
「ドイルさん……。」
やめろ、タダトモさん、そんな目で俺を見るな。
「あなた、どうしてユキちゃんがかわいいことを知ってるの?」
小金井ささらさんが顔を近づけてくる。ユキちゃんの首が横にかくんと傾いている。まるで質問をしているかのようだ。長い髪の毛が揺れている。
「かわいい人形さんですよね!」
声が上ずってしまう。しまった、SNS怖い。
「そうなの。ユキちゃんはとってもかわいい、そしてとっても強い子なの。」
小金井ささらは髪を撫でる。
「はなぽさん、どうぞこちらへ。団長のところへご案内します。」
よだかさんが話を切って案内を始めた。タダトモさんと俺はその流れに乗って、後ろからついていく。小金井ささらさんも、ユキちゃんの髪を撫でながら最後尾をついてくる。
しんがりを務めてくれているらしい。後ろから時折ユキちゃんと話しているのか、会話が聞こえてきたが、俺はあえて反応しなかった。
「団長の命令でお迎えにあがりました。剣闘師団のよだかと申します。」
よだかの名乗る男は、剣を腰に差しながらこちらの姿を目視すると挨拶をしてきた。
「お迎えありがとうございます。私は、はなぽ、わんわんPの称号を頂いている建造士です。」
はなぽが挨拶を返す。
「僕はタダトモ。ダンテPです。」
名乗りが簡単にまとめられた。
「ドイルと言います。ということは、ライチョー隊長Pから連絡がいったんですね?」
深く突っ込まれる前に質問してしまおう。
「はい。ごーぶすさんから連絡を受けたと聞いています。クロスフェードへの転移を手助けしてほしいと伺っています。」
見た目と喋り方からしっかりした印象を受ける青年だ。
「それと、こちらは……。」
よだかさんが言葉を話し終える前に声が割り込んで来た。
「小金井ささら……こっちはユキちゃん。ほら、ユキちゃん、挨拶して。」
小金井ささら。この人はボカロ丼にいた人だ。そうか、この後にくるのはボカロ丼でよく見ていた"あのセリフ"だ。
「「ユキちゃんかわいい」」
しまった、被ってしまった。
#ボカロ丼異世界ファンタジー
「はなぽさん、この先にサーチに引っかかってる人がいます。」
すでに戦闘の煙は見えないということは、剣闘師団は敵を倒したのだろう。そして、少し先に固まっている剣闘師団から1人がこちらに来ている。
こちらに気づいていると見て間違いない。
「隊長から連絡が言っていれば、お迎えのはずですが。」
はなぽさんは、マキエイと春沢翔兎との戦いを思い出しているのだろう。
「いきなり仕掛けてくるようなことはないですよ、たぶん。」
タダトモさんも少し心配そうだ。
「もうすぐですよ。kentaxという方ならいいんですけどね。」
木々の間を抜けると直線の道に出る。
道の先に立っているのは2人。どうやら剣闘師団ではない人もいるらしい。
1人は剣を腰にさしている若者。
もう1人は人形を抱き抱えているように見える。
髪が長いからおそらく女性だろう。
「2人いますね。」
タダトモさんも視認したようだ。
「あの人は、人形使い。魔法師団に所属する小金井ささらさんですよ。」
どうやらはなぽさんの知り合いのようだ。
「もうお一方は、存じ上げませんが。」
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特別編:祭りの期間13
たてごと♪の態度に切身魚は感情を露わにしそうにもなったが、それを全く表に出さなかった。
「それでは本題に入らせて頂きます。こちらをどうぞ。」
背を向けたままヒュッという音と共に投げて渡されたのは、一通の封筒。魔法でも使ったかのように、投げられた封筒は受付の上に置かれた。
「受取拒否としたいところですが、直接のお手紙となれば今回は目を通します。」
切身魚は封筒を見た。裏を見るとそこに押されていたシーリングスタンプは赤黒く、見たことのない不可思議な模様。切身魚が顔を上げると、すでにたてごと♪の姿はなかった。モノローグを発動し、図書館の中を探るが反応がない。すでに建物の外にいるようだ。
「先日来、どうにも望ましくない来客が多いようです。」
そう言って、切身魚は封筒を開けた。中から出てきたのは一枚の紙。
"近々、禁書を頂きに参ります。セレスティアの祭典に勝るとも劣らぬ宴を期待しております。"
どうやらまたしても招かれざるお客様が図書館においでになるらしい。
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特別編:祭りの期間12
たてごと♪は受付にくるりと背を向けた。
「残念です。」
しとり、しとり、しとり……
いつのまにか、たてごと♪の周りから水の滴るような音が聞こえている。
「"涙雨"」
たてごと♪は突然魔法を放った。たてごと♪の周りに生じていた水滴が、散弾のように受付に座る切身魚へと向かう。
「図書館ではお静かに願います。"モノローグ"。」
受付の前にある床がせり上がり、たてごと♪の水滴を防いだ。床の素材は固いのか、魔法による攻撃でも傷一つない様子である。
「スキル"モノローグ"。やはりあなたが切身魚さんでしたか。」
たてごと♪はすべて分かっていたかのように背を向けたまま話している。切身魚は、読んでいた本に栞を挟み込み、わざとらしく音を立てて本を閉じた。いつのまにか猫が膝から受付の上に飛び移り、フーッと毛を逆立てながら威嚇している。
「突然このような真似をして失礼しました。祭りの日であれば誰にも邪魔されることなくあなたにお会いできると思っていたものですから。」
特別編:祭りの期間11
「ようこそ図書館へ。何かお探しですか?」
切身魚が声をかけたのは、その者が図書館へ初めてくる男だったからである。
「探しているのは、本ではなく人でしてね。それにしても祭りの日でも図書館を開けていらっしゃるとは驚きました。」
顔を隠すでもなくその男は入って来た。入ってからしばらくは本に囲まれた部屋の中をきょろきょろと見回していたが、やがて顔をこちらに向けると挨拶を返して来た。
「初めまして、私はたてごと♪。カラダに優しいPの称号を頂いています。あなたが切身魚さんですか?」
たてごと♪と名乗る者は、おそらく人族だろうと切身魚は考えた。しかし、こんな祭りの日にいかなる用事で図書館に足を運んだのか、切身魚とたてごと♪は面識はなかったはずである。
「お約束のない人とは切身魚さんはお会いにならないと思いますよ。」
本のページをめくると膝の上にいる猫のクビについた鈴がちりんと音を鳴らした。
「切身魚さんではありませんでしたか。それは大変失礼しました。その内に秘めた魔力。噂通りの方だと思いましたのに。」
特別編:祭りの期間10
その夜は特に蒸し暑く、湿度の高い空気が街全体を包み込んでいた。そこに祭りの熱気が被さり、そこは熱帯の檻の如くである。10時を回ろうかというのに、未だ街のざわめきは収まらず。この日、クロスフェードの街は、宵のうちから、珍しい人出である。信心でお祭りをする善男善女もあれば、避暑のために涼みがてらの人たちもあり、人ごみを楽しんでいるだけの風来坊もいれば、混雑につけこんで何か良からぬことを企む不届き者もないとは限らぬという具合である。人通りの多い、大通りの屋台では声をからして客を呼んでいる。しかし、それはせいぜい大通りだけであり、一筋入ったところにある図書館には人っ子ひとりいなかった。司書である切身魚は、祭りにはあまり参加せず、今日も図書館を開けて受付にある。
祭りの喧騒を避けて図書館の入口あたりをうろつく男が一人いる。図書館の扉の前で立ち止まり、中の様子を伺っている。その男は左右を確認しながら、そっと扉を開けて中へと入っていった。
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特別編:祭りの期間9
kentaxはどうやらヤマシロに丸投げしようとしているらしい。
「もちろんですとも。」
さすがは店主だ。
「kentax団長も、ユキちゃんの装備選ぶのに協力してください。」
おいおいおいおい。小金井ささら、お前は何を言ってるんだ?今度は心の声を外には出さない。
「ほら、ユキちゃんもお願いしてますよ。」
そう言って、小金井ささらは、kentaxに人形を近づける。すると、人形の首がカクカクと縦にうなづいているのが見えた。
「わかった、わかったから近づけんな。ったく、俺は忙しいってのに。」
kentax団長の祭りの日々はどうやら色々と大変そうである。
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特別編:祭りの期間8
「それはありがたい。ぜひ、色々見ていってください。祭りの日だから安くしときますよ。」
ひとまず小金井ささらが通り過ぎるまで、ここにいればいい。そう思っていると、ドアが開いた。
「こんにちは。」
入ってきたのは小金井ささらだ。
「なんで魔法師団が武器屋に来てんだよ!」
心の声が漏れた。
「あら、団長さん。お久しぶりです。ユキちゃんは相変わらずかわいいですよ。」
小金井ささらは普通に話しかけてくる。
「おお、久しぶりだな。ど、どうしてここに?」
団長とは思えないほどのしどろもどろな感じになっている。
「ユキちゃんに装備する武器を買いに。」
人形に装備させる武器を買うとは、魔法師団の考えることはよくわからん。
「それなら店主に聞けばいい。きっといいものを出してくれるぞ。な、ヤマシロさん。」
特別編:祭りの期間7
すると、買い物を終えた小金井ささらがこちらへ歩いてくる。
「こっちに来る……だと!」
一本しかない大通りならば、どちらかに来るのは当然のことなのだが、kentaxは小金井ささらを避けるように目の前にあった店に駆け込んだ。
「いらっしゃい。」
男の声だ。ここは、武器屋か?
なんの店かわからずに入ったが、あたりにはさまざまな武器が陳列されている。
「おや、あなたは、剣闘師団の?まさかこんなところでお目にかかれるなんて。祭りの日は変わったお客さんも来るもんですね。」
店主はどうやらkentaxのことを知っているようだ。
「お、おう。俺が団長のkentaxだ。」
とりあえず名乗る。
「私はヤマシロと言います。これでも、長く武器屋をやっていましてね。剣闘師団の武器のいくつかはうちで作らせてもらったものです。」
偶然とはいえ、剣闘師団に関係するものの店に来たらしい。
特別編:祭りの期間6
kentaxは祭りの期間の間、クロスフェードの街の警備を任されていた。剣闘師団の仕事に休みはない。とはいえ、休みみたいなものだ。民衆同士の小競り合いなんかはあっても、祭りの間にそれほど大きなことが起こることはない。
今回は無理矢理といえば無理矢理だが、よだかに王城の警備を丸投げしてきた。
「泡麦ひえは、自分で王を警備するって言ってたな。意識高いぜ、ほんとによ。」
kentaxは祭りにわく大通りをぶらりと歩いていた。
「うお、あれは。」
kentaxが見つけたのは、露店の服を物色している小金井ささらだった。kentaxはさっと身を隠し、様子を伺う。
「この生地でユキちゃんの服を作るの、どう思いますか?」
どうやら店員に話しかけているようだ。店員は困惑した笑顔を浮かべながら「良いと思います」と言っている。
「じゃあ、これ、頂きますね。ふふふ、ユキちゃんかわいい。」
腕に乗せた人形の髪をとかしながら笑っている。「こええええ。」とkentaxは心の中でツッコミを入れた。
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特別編:祭りの期間5
「それでは、藤杜さん、あなたはプリズムへ発ってください。」
キマシタワーPの指示を受け、藤杜はプリズムで開かれている祭りへ使者の一人として参加することになっていた。
「現地で、もしお会いすることが叶えば、海洋評議会のメンバーによろしく伝えてください。しょこらどるふぃんさんはお忙しいかもしれませんが。」
キマシタワーPはプロムナードの祭りに出なければならない。
「分かりました。微力を尽くしましょう。」
藤杜は、キマシタワーPの名代として、プリズムの祭りで行われる儀式に参列することになっていた。
「ああ、ゆかいあが美しくて今日も世界が眩しい。」
その言葉を聞き終わると藤杜は部屋を出た。キマシタワーPもどうやら外へ出る準備をしているようだ。
「プロムナードの祭りに行くとしますか。新たなゆかいあを発掘せねばなりません。」
そして、祭りへと繰り出す彼の服にはこう書かれていた。
"ゆかいあは正義"と……。
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特別編:祭りの期間3
ドアの外から声が聞こえた。
「ええ。いますよ。」
ドアを開ける。そこに立っていたのは、可愛らしい服装をした吟遊詩人。"雨乞いの歌"のこるんだった。
「どうしたんですか、突然。」
ユーリは、クロスフェードに来る前に滞在した街で、偶然、吟遊詩人こるんと出会った。突然声をかけられた時は警戒したが、どうやらこるんは、雨乞いの歌の実績を元に学園の推薦試験を受けるらしい。
「今日からはセレスティアもお祭りだから、ユーリさんと一緒に回ろうと思って。」
クロスフェードの街にはまだあまり詳しくない。こるんは、クロスフェードのことを良く知っている。
「構いませんよ。準備ができたらいきましょうか。」
森の戦姫。身分を明かすことのないリッカの姫と吟遊詩人こるんは、祭り囃子の響く大通りへと出かけていった。
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特別編:祭りの期間2
「お祭り?もうそんな時期なんだ。」
クロスフェードの学園に程近い場所にある一軒家の二階。学園の試験までの間、ユーリはそこに間借りしていた。
リッカでもこの時期は毎年祭りをしていた。かつては両親とプロムナードの街へ祭りを見に繰り出したこともある。そんな昔のことを思い出しながら、ユーリは外出の準備をしていた。
クロスフェードの街を見て回ろうと思ったのだ。あまり人が多いのは好きではないが、祭りの雰囲気は嫌いではない。リッカにいたころから日課になっている剣の稽古も祭りの間はお休みにしてもいいかもしれない。
「お祭りに行くと、いつも、つい使っちゃうんだよね。」
出かける前に財布を確認する。祭りの雰囲気は人を高揚させることをユーリはよく理解していた。
コンコン……
出かけようとする直前になってドアがノックされる音が聞こえた。
「ユーリさん、いますか?」
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特別編:祭りの期間1
祭りが始まる。
セレスティア王国を中心とした6大国数日間に渡る祭りの準備に追われていた。
年に二度開催されるこの祭りは、レミルメリカ全土を活性化させる。
「準備は整えたか?」
クリスエスは、両家が正式に婚姻を結んだことで諸々の準備に追われる王と王妃に代わり、m-a と共に祭りの指揮に追われていた。
クリスエスは兵士たちからの報告を受ける。
ほぼ、祭りの準備は終わっているようだ。
「ならば、我らも街に出よう。この時くらいは、皆々と関わることも悪くない。」
剣闘師団、魔法師団もこの祭りの間は数名の警護部隊を除いて、祭りを楽しんでいることが多い。
「では、そうしましょうか。しおまねきさんも今日は店を開けているでしょう。我々もそちらへ。」
m-aも動くことに同意した。
「王の分まで、民衆と戯れねばな。」
クリスエスとm-aは執務室を出る。まだ城内にいるというのに、すでに外からは楽しそうな宴の音が響いていた。
「たしかにこっちに向かってる。たぶん、あの辺から。あと少しでここを通る。」
小金井ささらが指差した方向を見るが、まだ姿は見えない。たしか、10キロ圏内を範囲指定できると聞いたことがある。
「それが"サーチ"ですか、すごいですね。」
ここを通るまでにはまだ時間があるはずだ。
よだかの賞賛に小金井ささらは反応する。
「ユキちゃんはすごいの。もっと褒めてあげてくれたら、きっと喜ぶ。」
そう言って、小金井ささらは再びユキちゃんの髪を撫で始めた。次第に人形と呼びにくくなっていくのが怖いところだ。
「さ、さすがユキちゃんですね」
よだかの賞賛に小金井ささらは満足したようだ。
よだかと小金井ささらは、ドイルたちの到着を待っていた。
「人探しの魔法が使える者はいないか?」と同行していた魔法師団に尋ねたところ、名乗りを上げたのは1人だけだった。
「探して頂きたい人たちはその3名です。よろしくお願いします。」
よだかは、kentaxから聞いた情報を渡した。
「ユキちゃんかわいい」
この人が魔法師団で噂の人形使い、"小金井ささら"か。手に乗せた人形の髪を撫でている。
「3人はユキちゃんが魔法で見つけてくれるから安心して。」
さすがは人形使いである。
「は、はい。」
よだかは慣れない人形との絡みにどうやら引いているようだ。魔法師団では当たり前の光景のようだが、剣闘師団ではそもそも女性すら珍しい。
「ユキちゃん、お願いね。"サーチ"。」
魔法師団でも使い手の少ない探索魔法だ。
「どうですか?」
よだかはサーチの効果をいまいち理解できていない。見るのもこれが初めてだ。
「なんですか、団長。」
よだかは剣の手入れをしていたようで、剣をしまいながらこちらに歩いてきた。
「人探しの魔法が使えるやつを魔法師団から誰か一人連れて、ちょっと迎えに行って欲しい奴らがいるんだ。そろそろ近くまで来てるはずだからよ。」
魔法師団で人探しの魔法が使えるものは限られているが、kentaxはよだかなら心配いらないと判断したようだ。
「わかりました。ちょっと行ってきますけど、先に経ったりしないでくださいね。」
団長は出立の準備で忙しいと察したよだかは、二言返事で引き受けた。そうでなければ、自分で行くはずだ。
「じゃあ、任せたぞ。俺は少しばかり用事があるんでな。」
やはり出立の準備だろう。よだかが背を向けたとき、kentaxの声が響いた。
「ついでに、金星伊津可と one my self を呼んでくれ。ちょっと話したいことがある。」
マキエイと名乗ったエイの海獣族、そして、何かにやられたと言っていた春沢翔兎と名乗ったピンク色のウサギ。先ほどのメッセージが確かなら隊長を襲った相手で間違いない。よだかは、手を挙げて了解の意を示した。
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10分程度で猿の魔物は片付いた。
kentaxの元に報告が入る。
「よし、少し休んだら出発だ。」
kentaxは皆に告げる。その時、kentaxにメッセージの魔法が届いた。
「おお、隊長じゃねえか。どうした?」
ごーぶす、ライチョー隊長Pからのメッセージだろう。
「おう。おお、そりゃあ大変だったな。撃たれたってお前。で、傷は?」
どうやら襲われた時の説明をしているようだ。
「エイとピンクのウサギだと?ちょっと待て、そいつらが隊長を襲った奴らなのか?ああ、いや、実はな……。」
しばらくの間、ごーぶすとkentaxのやりとりは続いた。途中、kentaxが声を荒げるような場面もあったが、どうやら話はまとまったらしい。
「分かった。詳しいことは、はなぽさん御一行が来たら聞いておく。クロスフェードまでは、もう少し先にある王国専用の魔方陣を使うつもりだから心配するな。ゆっくり休んでくれ。」
kentaxはメッセージを切ると、剣闘師団のよだかを呼んだ。よだかは、剣闘師団の中では最年少だ。そのため、団長にはよく呼ばれる。
魔法師団は、猿の魔物の動きを止める魔法を放ち、剣闘師団の支援を行っていた。威力の高い魔法はこのような場所では、周りの自然を傷つけてしまう。そのため、単独で戦う時以外は殲滅の魔法を使うことは控えるように指示が出ていた。
「魔法師団は木の上の奴らに魔法をかけろ、剣闘師団、残り8体、一体も逃すな。」
団長の声に反応して、団員たちの士気が高まる。しかし、団長であるkentaxはその声を上げた後、自分の剣を鞘に納めた。これは、kentaxのいつもの行動だった。
"あとはお前たちに任せる"
それを示すための行動だ。団長は剣闘師団の中でも最強の力を誇る。それゆえに、ひとたび戦場に出れば、敵のほとんどを屠ってしまう。そうなると、剣闘師団の下の者たちに活躍の機会はない。kentaxは実践に勝る訓練はないと知っている。自らもそうして強くなったのだから。
だからこそ、団長は剣を納め、前線を下がる。団長が猿の魔物に背を向け、歩き出す。3方向で戦っていた剣闘師団たちは猿の魔物を殲滅するべく動き出した。
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